私が思う硬筆書写検定3級〜1級レベルの「温」を書き分けてみました
硬筆書写検定3級〜準2級レベル
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硬筆書写検定3級〜準2級レベルでは、高度な行書で書く必要はなく、初歩的な行書体で書ければOKです。
例えば行書体の特徴として①点画の連続が見られたり、②点画が丸みを帯びるようになります。
なぜ①や②の特徴が出現するかといえば、行書体がそういう性格だからです。
行書体はせっかちであり、常に速く行きたいと思っているので、ペン先が紙からしっかり離れきる前にペンを動かしてしまうものですから、①で示したような気脈の実線化という現象が起きます。
今回の例の場合、「曰」の横画2本を完全に繋いでしまっていますが、以下のように途中で切れてしまっても問題ありません。
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注意したいのは、行書体はただ速く書けば良いというわけではないということに注意してください。
休む箇所ではしっかり休み、速く動かす箇所では速く動かします。
硬筆書写検定2級〜準1級レベル
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硬筆書写検定2級〜準1級レベルでは、更に行書の特徴を表現していきたいです。
例えば、点画と点画が接する箇所、接筆(せっぴつ)が離れたり、点画の連続が更に進んだりします。
接筆は必ず離れなければならないというわけではなく、特に②’で示した箇所は、くっつく場合もあります。
私の場合、くっつける場合というのは、接筆を離すほどスペースが存在しない場合です。”場合”ばっかりですね。
そもそもなぜ接筆が離れるかと言われれば、行書は気脈が実線化することが多いので、楷書に比べて線が増えます。
線が増えるとうるさく見えてしまうので、接筆を離して”白”の面積を増やすことで、増えた線と白の面積を調和して見せようとしているわけです。
例えるなら、カルピスの原液(つまり線)が増えると、それだけ薄めないと美味しくならないわけですが、薄める役割というのが水(つまり白)というわけです。
難しいのが、カルピスの味というのは、人によって好みが分かれます。
少し濃いめが好きな人もいれば、少し薄めの味が好きな人もいます。
なので当然、濃いめの味が好きな指導者もいれば、薄めの味が好きな指導者もいるということなので、行書や草書というのは、指導者によって崩し方が少し異なるので、つまり教え方も微妙に異なってくるわけです。
硬筆書写検定準1級〜1級レベル
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硬筆書写検定準1級〜1級レベルでは崩し方も更に進みますが、どちらかといえば、言われないと気づかないような細かい表現を多用し始めます。
この言われないと気づかないような細かい表現というのが、いよいよ美の本質に近づこうとしている表れだと思います。
私の経験上、これ見よがしな表現というのは、それをすればするほど美の本質からは遠ざかっていくことが多かったです。
本当の美しさというのは、全く無駄がない状態であり、不自然さがなく、全てにおいて自然である状態だと思います。(書道でいえば有名な古典作品がそれです)
本当に上手な人というのは、この自然さを意図的に表現してしまう人です。
人間という生き物は何かを表現する際、全てが意図的になるのが当たり前なはずなのですが、意図的であるはずなのに、本当に上手な人が書いたものは、そこに作為を感じさせず、非常に自然なものなのです。
この領域にたどり着くためには、「何が無駄なのか」「何が必要なのか」を1つ1つ知っていくしかないですし、これは非常に時間がかかるものです。
すぐに結果を求めようとしてしまうタイプの人は常に焦っているので、言われないと気づかないような細かい表現を見落としてしまうか、見えるんだけどそれが美しさの重要な要素であるということに気づかないので、いつまでたっても上達しないというわけです。
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・講義で学ぶペン字コース 楷書
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大人向けとしていますが、硬筆書写検定4級以上を受験される方でしたら年齢制限はありません。
一応中学生以上の方であれば理解できるような内容になっていると思います。