教えるプロが執筆した、美文字の教科書

第47回 東京書作展 奨励賞でした

2025年1月〜9月頃まで、東京書作展(書道の展覧会)への出品に向けて練習をしていたのですが、厳正な審査(笑)をしていただいた結果、一応、東京書作展では奨励賞をいただきました。

笑ってしまい申し訳ありません。審査をしていただいた審査員の方々には大変感謝を申し上げます。

奨励賞は下から2番目です。

私が出品したのは、「第一部門=漢字・篆(てん)刻・刻字(自書自刻)」です。
ぜひご笑覧ください。

会期:令和7年11月19日(水)~11月24日(月)

場所:東京都美術館 2階(第1・第2・第3展示室)
東京都台東区上野公園8-36

入場料:500円

詳しくは公式ホームページでご確認ください。

題材は崔子玉(さいしぎょく:人の名前)座右銘(ざゆうのめい:詩のタイトル)という丁度100文字からなる漢詩を使わせていただきました。行草(ぎょうそう:行書体と草書体が混じった書体)で書いています。(実はいくつか明確誤字をしてしまっているところがあります。)

他にも七言律詩(しちごんりっし:56文字からなる詩)、七言絶句(しちごんぜっく:28文字からなる詩)を題材にして、つまり100文字・56文字、28文字の3パターンの練習をしていたのですが、仕上がり的に最終的には100文字のものを出品いたしました。

100文字・56文字は、なんとなく作品っぽく仕上がったのですが、28文字の作品は最後の最後までうまく決まらず、時間切れとなりました。

多い文字数よりかは少ない文字数で作品っぽく仕上げるのが非常に難しいと、今回の経験を通して学びました。

ちなみに崔子玉座右銘を題材として選んだ理由は、書かれている内容が非常に素晴らしいと思ったからです。
(崔瑗(さいえん)が本名で、字(あざな:別名)が子玉(しぎょく)。78~143、後漢の政治家。)

座右銘は、五言二十句=合計100字の短い訓戒文で、日々視界に入るところ(座の右)に貼って自戒するための文章です。『文選』にも収められ、後世まで広く書写されました。
(訓戒分:注意を促す文章、文選(もんぜん):詩集)

  1. 無道人之短:他人の欠点を言いふらさない。
  2. 無說己之長:自分の長所を吹聴しない。(自慢しない)
  3. 施人慎勿念:人にした親切は恩に着せず、サラッと忘れる。
  4. 受施慎勿忘:受けた親切は忘れず心に刻む。
  5. 世譽不足慕:世間の評判やバズを追いかけない。
  6. 惟仁為紀綱:行動のものさしは、なにより「思いやり(仁)」に置く。
  7. 隱心而後動:まず内省し、熟慮してから動く。
  8. 謗議庸何傷:筋が通っていれば、悪口に傷つく必要はない。
  9. 無使名過實:名声が実力を追い越さないように。
  10. 守愚聖所臧:小賢しさより、愚直・素朴を大切に。
  11. 在涅貴不緇:環境が悪くても染まらず自分を保つ。
  12. 曖曖內含光:控えめでも、内に実力と品位の光をたたえる。
  13. 柔弱生之徒:硬さより柔らかさが生命力を生む。
  14. 老氏誡剛強:剛強に走るな、しなやかさを忘れるな(老子の戒め)。
  15. 行行鄙夫志:盲目的に突っ走る頑固さは小人物のやり方。
  16. 悠悠故難量:大きな志は悠々として測りがたい(すぐに評価できない)。
  17. 慎言節飲食:言葉は慎み、飲食は節度を守る。
  18. 知足勝不祥:足るを知れば、災いに打ち勝てる。
  19. 行之茍有恆:ここまでを飽きずに続ける。
  20. 久久自芬芳:そうすると、やがて徳の香りが自然と立つ(香水いらずの品格)。

13がわかりづらいので補足すると、つまり、

13.生きているものは柔らかく、死んだものは硬い。新芽はしなり、枯れ枝はポキッと折れてしまう。頑なさは一見強そうでも、折れやすい。

ということを言っていて、次の14で「だから老子も剛強(硬い)に走るなと戒める」ということが書かれています。老子の名を出して虎の威を借りたわけです。「イチローも言ってたんだけど、」みたいな。

18も補足すると、つまり「何事も”過ぎる”は良い結果を招かないよ」ということですね。
例えば、ペン字の練習し過ぎは腱鞘炎を招いたり、薬の飲み過ぎは身体に毒であったり。
前句の17も同じようなことを言っています。喋り過ぎは人が離れていき、食べ過ぎ飲み過ぎは健康が離れていく。

大分意訳ですが、大きくはズレていないと思います。

現代人の悩みは結局のところ人間関係に集約されるらしいですが、良い人間関係の築き方というのは、このようにとっくの昔に発見されているんですよね。とても面白いです。

よろしくお願いいたします。