今回は、毛筆書写検定1級の第5問自由作品において、どうすれば合格点をとれるのか詳しく解説していきたいと思います。
結論から書きますと、合格だけを最短で目指すということであれば、
・漢字14文字or漢字5文字
・楷書体で書く
・古典の特徴を表現した倣書(ほうしょ)で書く
が一番無難であり、勉強量や練習量も少なくて済みます。
漢字の行書体or草書体や、和歌や現代詩については、求められる章法(総合的な力)のレベルがとても高いので、よほど自信が無い限り避けたほうが良いでしょう。
自由作品といえば、行書とか草書で書かないといけないんじゃないの?
→これはよくある誤解です。楷書体で書いても自由作品です。
まずは最終的なゴールを確認する
あなたが到達しなければならない最終的なゴールを確認しておきましょう。

こんな感じです。
漢字5文字は龍門二十品の一つである牛橛造像記(ぎゅうけつぞうぞうき)の倣書で書いており、
漢字14文字は、
イ.は孔子廟堂碑 (こうしびょうどうひ)
ロ.は九成宮醴泉銘(きゅうせいきゅうれいせんめい)
の倣書で書いていますが、このように倣書で書くことが、最も最短で合格点が取りやすいかと思います。
倣書(ほうしょ)とは?
→その古典の特徴がわかるように表現すること。それに対して自運(じうん)とは、普段の自分の字で表現すること。要はあなたがサザンの桑田佳祐(もしくはユーミン)っぽく歌うことと、書道の世界でいう倣書とが同じような意味だということです。
その古典っぽい雰囲気で書くことが倣書というわけです。
自由作品なのだから、自由に書いてはダメなの?
→自由に書いてはダメです。審査員が評価しやすいものを書かなければなりません。倣書(ほうしょ)は、審査員が審査しやすい作品形式(テンプレ)の一つと思ってください。「その古典に似ているかどうか」というのは、客観的な評価がしやすいです。
倣書が良いなら、なぜ行書体(例:蘭亭序)や草書体(例:書譜)はダメなのですか?
→相当自信があるなら書いてもよいですが、大体の場合は、その古典の特徴をしっかり表現することができずに終わります。下手くそなモノマネほど見ていて辛いものはないです。つまり不合格です。
合格点をとるために必要な練習
第5問自由作品で合格点をとるうえで絶対に必要な練習は以下2つ、
① 紙面に対しての字の収め方(布置)を身につける
② 「これは○○の倣書だね」とパッと見ただけでわかるぐらい、その古典の特徴がわかるように表現する技術を身につける
です。詳しく解説していきます。
①紙面に対しての字の収め方(布置)を身につける
第5問自由作品で使う紙は半切サイズ(約136cm×35cmぐらい)で、大きい紙です。
半紙と比べればとても大きい紙で、この大きい紙で書き慣れていない人は、字粒(じつぶ:字の大きさ)が尋常ならざる大きさになりがちです。
なぜ大きくなってしまうかといえば、書くスペースが広いとそのスペースを埋めようと、自然と字が大きくなってしまうからです。
また、紙面の一番下の余白(行末)も、広くなりがちなので注意が必要です。
これらを解消するために、まずは罫線が入った半切用の下敷きを購入しましょう。毛筆書写検定は、罫線が入った下敷きの持ち込みが許可されています(ただし、自作の下敷きはNG)
漢字5文字も、漢字14字も以下の下敷きがオススメです。
観!自在 多用途下敷 1mm
www.amazon.co.jp/dp/B006LWLC12

おすすめ理由は、漢字14文字で書く場合の1行目・2行目の中心線が、やや内側に寄っているところがとても良いからです。
漢字14文字で書く場合の中心線は、以下のように内側に約1cmした箇所になります。

漢字14文字の場合、以下のように1行目に8文字、2行目に6文字を収める構成が無難なのですが、それも罫線通りに書けばOKです。
ただし、字によっては大きめに書く字、小さめに書く字があり、必ずしも以下目安の通りに書けない場合がありますので、あくまで目安程度にしておきましょう。

ちなみに、①〜⑭という数字は、この順番通りに書き進めるという意味なのですが、どこから書き始めるのかは自由です。なので、例えば2行目の頭(つまり⑨)から書き始めても良いですし、①のあと⑧を書く、というのもOKです。
ですが、一応①〜⑭の書き進め方が一般的なので、その通りに書いておくことに慣れるほうが良いかなと思います。
落款は、要は署名みたいなものです。普通は自分の名前を書くのですが、これは試験ですので落款は「松風書」と書きなさいという指示をされています。オレンジの点線で示した線あたりから書くと丁度よいと思います。
最後に落款印の場所を示します。実際の落款印を押すのではなく、耐水性顔料か油性の赤いマーカーで四角形を描き、落款印を押した体にします。(私はいつもプロッキーを使っています)
半切サイズの場合、2.1cm×2.1cmサイズの落款印を押すのが一般的ですが、小数点の世界まできっちり表現する必要はなく、2cm×2cmで書いて全く問題ありません。完全に誤差です。

漢字14文字の場合の「松風書□」の字間は、それぞれ1cmぐらいで良いかと思います。
(落款を書くときの筆は、14文字書いたときと同じ筆で書くのが一般的ですが、中筆で書いても良いです)
一方、漢字5文字の場合は14文字より単純で、中心線はど真ん中でOKです。やや難しいのが、どの罫線を目安にして文字を収めていったら良いかということです。
以下①〜⑤で示した箇所に文字を収めれば良いのですが、青い点線で示した線を目安にすると良いでしょう。

落款は、オレンジの点線で示した線あたりから書くと丁度よいと思います。
「松風書□」の字間は、それぞれ2cmぐらいで良いかと思います。14文字よりやや広く字間をとると良いです。
(落款を書くときの筆は、14文字書いたときと同じ筆で書くのが一般的ですが、中筆で書いても良いです)
以上が①の解説となります。
②「これは○○の倣書だね」とパッと見ただけでわかるぐらい、その古典の特徴がわかるように表現する技術を身につける
どちらかというと②の練習が一番時間がかかるかと思います。
漢字5文字で九成宮醴泉銘や孔子廟堂碑の倣書で書くのは有り?
→書いてもOKですが、14文字と比べて大きく字を書く分、かなり粗が目立ってしまい、減点されやすいです。大体、線が細くなってしまい貧弱に見えてしまって減点される人が多いです。
逆に漢字14文字で牛橛造像記は有り?
→書いてもOKですが、こちらは字が大きくなりすぎてしまって余白がきれいに見えなくなり減点される可能性が高いです。
要は、このようにブログで不特定多数の人に書き方のポイントを伝える場合、最も無難な書きぶりに仕上がるようなオススメの仕方が、
・漢字5文字は牛橛造像記の倣書
・漢字14文字は九成宮醴泉銘もしくは孔子廟堂碑の倣書
ですよとなるわけです。
漢字5文字で牛橛造像記の倣書の練習をする
まずは練習に必要なものを購入しましょう。
・下敷き(先に紹介したもの)
・大筆(検定協会で購入できる大筆 白龍がオススメ。青龍じゃないですよ。)
・墨汁(玄宗 濃墨。書きづらいですが、牛橛はほんの少しカスれるように書くと良い。)
・龍門二十品(上)(天来書院のものがオススメ。筆路がわかりづらいものは骨書きが書いてあります)
・半切(まずは子ども用の安い半切で良いでしょう。ややにじみ、やや薄めのものが良いです。試験2ヶ月前ぐらいから検定協会で販売している半切で練習をすること)
まずは牛橛造像記の臨書をひたすらしましょう。
半紙ではなく半切に書いていきます。
初心者の方は、とにかく字が大きくなりがちなので、字が大きくなりすぎないように最初のうちは半切の両端を折り、紙面を無理矢理小さくします。
以下のように両端を約8cm折ってみましょう。


紙を折り、狭くなった紙面に対して漢字5文字ずつ臨書していきます。
臨書する際のポイントとして、横幅は、紙の端っこ目一杯までギッチリ使ってください。少しはみ出す(つまり字が欠ける)ぐらいの勢いで大丈夫です。
そうすると、それでもかなり字が小さくなるかと思いますが、全く問題ありません。
牛橛造像記は、点画を太く・点画同士の隙間を極限まで狭く(少しぶつかっても良いくらい)、方筆(角張った雰囲気)で書かないといけないのですが、そうすると字が持つ力(字座:じざ、もしくは字場:じば)が強くなり、字が小さかったとしても、全く貧弱には見えなくなります。むしろその字場を和らげるための余白がたくさん必要になってきます。
字場は以下のように磁力線のようなものだと思ってもらって大丈夫です。

ですので、字を大きく書いてしまうとそれを和らげるための余白が足りなくなり、非常にくどく見えてしまうわけです。
牛橛造像記は文字数が少ないので、全臨(ぜんりん:すべての字を臨書すること)が簡単です。まずは1回全臨をしてみて、そのあとに活字だけを見て、牛橛造像記っぽい雰囲気で書いてみましょう。つまり倣書です。
おそらく上手に書けないはずです。
なぜ上手に書けないのかを分析してみてください。
・横画の起筆の形や角度、収筆の形や処理
・転折の処理
・点の形
・点画の太さ、点画同士の隙間
などなど。
自分なりに分析した結果をもとに、再度臨書をしてみましょう。
そうすると、「あ、この場合はこういうふうに書けばいいんだ」と、自然にどうすればいいか答えが出てくるかと思います。
つまり、臨書→倣書→臨書→倣書→・・・を繰り返し、牛橛造像記の書きぶりを身につけていくというわけです。
適切な字粒の感覚がつかめたら、紙の両端を折らずに臨書していきましょう。
落款は、書体を一つくずした書体、つまり楷書体であれば簡単な行書体で書くと良いでしょう。
漢字14文字で九成宮醴泉銘もしくは孔子廟堂碑の倣書をする
まずは練習に必要なものを購入しましょう。
・下敷き(先に紹介したもの)
・学生ときぞう小(楽天などで購入できます)
・墨汁(玄宗 中濃墨)
・九成宮醴泉銘もしくは孔子廟堂碑(天来書院のものがオススメ。筆路がわかりづらいものは骨書きが書いてあります)
・半切(まずは子ども用の安い半切で良いでしょう。ややにじみ、やや薄めのものが良いです。試験2ヶ月前ぐらいから検定協会で販売している半切で練習をすること)
まずは九成宮醴泉銘もしくは孔子廟堂碑の臨書をひたすらしましょう。
半紙ではなく半切に書いていきます。
初心者の方は、とにかく字が大きくなりがちなので、字が大きくなりすぎないように、最終的なゴールで示したような字粒になるように意識して書いてみましょう。
本番を想定し、1行目8文字、2行目6文字、つまり14文字ずつ臨書をしていきましょう。
九成宮醴泉銘の特徴は、
・背勢
・起筆が硬い
・転折がボコっとしている
孔子廟堂碑の特徴は、
・向勢
・起筆がやわらかい
・転折はボコっとさせない。(ただし行書のようには書かない)
以下、ざっくりとした比較ですが、こんな感じです。

このような特徴を表現できれば倣書として成立します。
どちらかというと、こちらの漢字14文字は、字形の組み立て方や筆遣いが稚拙で洗練されていないことが原因で減点されている人が多い印象です。というかほとんどこれです。
字形の組み立て方については、私が書いた「プロが使う美文字のテクニック〜書き込み式〜」をしっかりやりこめば良いでしょう。
牛橛同様、臨書→倣書→臨書→倣書→・・・を繰り返し、書きぶりを身につけていきましょう。
独学では不安な方や、通っている教室では書写検定の対策をしていない方 → ぜひ公開添削に応募してください。
2級までは無料、準1級・1級は月額90円という超格安で添削をさせていただいています。
月に1度、YouTubeのライブ配信という形式で、公開添削という形で添削をしていまして、自分の答案の添削だけでなく、他の方の添削も見れますので、上達のスピードが段違いです。
ご質問だけでもOKです。
過去の添削動画はこちらです↓
(こちらはYouTubeのメンバーシップ登録なしで閲覧できる無料のほうです)
公開添削を利用して毛筆1級や硬筆1級に合格した方も何名もいらっしゃいますので、その添削品質はお墨付きです。
>>> 公開添削の詳細はこちら <<<



