【硬筆・毛筆】効率的な練習方法について

今回は永遠のテーマである硬筆・毛筆書写における効率的な練習方法について書いていこうと思います。

結論から言うと、そんなのあったら私が教えてほしいくらいですし、なんならそれを教えられるほど私もまだ上手に書けないのですが、それを言ってしまったら終わりなので、なんとか無理矢理書いていきます。

圧倒的な練習量

自分の字が変わったなぁ〜と思った明確に思ったタイミングがありまして、それはこちらの投稿【1年で合格】硬筆書写検定1級合格を目指していた時の1日の練習メニュー【当時の筆跡】でも書いたとおり、とにかく1日中練習してた時期です。

毎日10時間以上練習していたものですから、さすがにそれだけやれば自分の字が目に見えて変わりました。

ひたすらお手本を見て練習して、どうしてそのお手本がキレイに見えるのか、字形の綺麗な組み立て方をできるだけ言語化していました。

とにかく綺麗な字に触れる時間が長かったから、お手本の綺麗な形がイメージとして焼き付いたのもあるかなと思います。

ペンの持ち方、筆の運筆の矯正

私はボールペンのペン先を1週間でダメにする(壊してしまう)ほど、筆圧が強かったですし、1時間も練習すれば手がクタクタになってしまうくらい握りが強かったのですが、これは練習時、つけペンを使うことでこれらの問題が解決していきました。

毛筆については、ひたすら古典の臨書を行うことで、筆の持ち方や運筆のリズムが変わっていきました。
半紙4字書きで、本当にひたすら臨書していました。
九成宮醴泉銘、孟法師碑は全臨したと思います。

本来ならこれぐらいしないと自分の字というのはそんな簡単に変わらないですよ、というのをお伝えしたかったので、こういうことを書いてみました。

ここからは、もう少し具体的に字の上手な書き方、練習方法についてお話していきます。

点画と線の種類を覚える

皆さんは当たり前のようにご存じかもしれませんが、漢字を構成しているのは点画で、ひらがなを構成しているのは線です。

「そんなの知ってるよ〜」と言われる方が大半かもしれませんが、私はこれが本当に恐ろしいのです。

点画や線を知った気でいると、それ以上上達することがないからです。
練習しているのに、知った気でいると上達しないなんて恐ろしくありませんか。
私はこれでしばらく痛い目を見てました。

わかりそうでわからない、いまだに点画や線というものに対して、新たな発見がよくあります。

恐ろしさを知っていただいたところで、次に点画や線の種類を覚えていきましょう。

点画には様々な種類がありまして、私が書いた「プロが使う美文字のテクニック〜書き込み式〜」では、点画を以下のように分類しています。

 

さて、ここで右上払いという点画に注目してみましょう。

右上払いは、以下のような点画です。
単体で書かれることもありますが、複合画(折れ)として書かれることも多いです。

複合画(折れ)として書かれる場合

みなさんの頭の中で、他のどの漢字で右上払いが使われていますかと質問されたら、どれだけ漢字を思い浮かべることができますか。

「そもそも右上払いって何?」
「右上方向へのハネじゃないの?」

という方が結構いるかもしれません。
私も過去、そうでした。

次に曲がりという点画に注目してみましょう。これは別名「浮鵞(ふが)」とも呼ばれている点画で、以下のような点画です。

複合画(折れ)として使われる場合

みなさんの頭の中で、他のどの漢字で曲がりが使われていますかと質問されたら、どれだけ漢字を思い浮かべることができますか。

これは結構思い浮かべることができるかもしれませんね。

私が言いたいことは、脳内でその点画を検索したときに、ちゃんとヒットする漢字がありますか?ということなんです。

全然ヒットしません!ということでしたら、その原因は
・そもそも点画のことを知らない
・点画自体は知っているが、その点画がどの漢字で使われているかなんて気にしたことが無い

大体この2つでは無いかと思います。これは、上達という観点ではとても問題です。

何が問題かというと、
・例えば右上払いの綺麗な書き方をお勉強したとします。
・実際に右上払いが含まれている漢字を書くときに、”その点画は右上払いで書く”ということを知らないとします。
・そうすると、よくわからない右上方向への謎のハネみたいな感じになります。
・せっかく右上払いの綺麗な書き方をお勉強したのに、お勉強の成果が発揮できない。
ということなんですね。

傘の差し方をお勉強をしても、「傘は、雨が降ったときに使用するもの」という傘の使用タイミングもお勉強できていなければ、身体はビッショリ濡れてしまうのです。

しかし、常用漢字すべての漢字の一つ一つの点画を調べる必要はありません。
要は、今までよりも点画というものに関心を持ってくださいね、ということなんですね。

そうするメリットは、点画の書き方が一つでも洗練されると、一気にたくさんの字も勝手に上手になるからです。

これは、楷書でも行書でも草書でも、ひらがなも同様です。

漢字を構成しているのは点画であり、ひらがなを構成しているのは線です。

・この点画は、この漢字のここで使われている
・この線は、このひらがなのここで使われている

ということがスラスラと言えるようになると、みるみる自分の字というのは変わっていくと思います。

私が書いた「プロが使う美文字のテクニック〜書き込み式〜」では、万人に通用するような上達理論に基づいて、いろいろとデザインやら設計をしているんですよ。意外に考えられてるでしょ?😏

ということを詳しく本に書いちゃうと、文字だらけになって堅苦しくなってしまうしページ数も無駄に増えちゃうので、書いていないのです。

これまで点画と線を中心にお話をしましたが、点画の集合体が漢字の部分となり、例えば
・偏(へん):氵(さんずい)、彳(ぎょうにんべん)など
・旁(つくり):刂(りっとう)、攵(ぼくづくり)など
・垂(たれ):尸(しかばね)、厂(がんだれ)
・・・
と呼ばれるようになるわけですね。

点画の種類と、漢字の部分の書き方を覚える

ということで、練習迷子の人は、
1.点画の種類と、それがどの漢字で使われているのか
2.漢字の部分の書き方

この2つを意識して練習されるだけでも、相当上達されるかと思います。
この2つは、私が定義した上達ピラミッドの中の基礎にあたる部分なので、絶対に勉強が無駄にならず、時間をたくさん書けてよい部分です。

どういう練習用紙、どういうマス目に練習したほうが良い?

毛筆の場合は、基本的に半紙しか選択肢がないと思うのですが、毛筆は罫線が入った下敷きを使って練習されたほうが、中心線が見える状態で練習できるので、オススメです。
中心線が見える状態で練習すると、中心を捉える感覚が養われないんじゃないかと言われる方もおられるのですが、私はそうは思わない立場で、罫線が入った下敷きで練習していると、気づいたら下敷きがなくとも線が見えるようになるので、最初は罫線が入った下敷きで練習すると良いです。

硬筆の場合は、中心線などの線が入ったマス目のもので練習されると良いでしょう。

ななめ線いりマス目練習用紙をご家庭のプリンタで印刷されても良いですし、市販の漢字練習帳を買って練習されても良いですし。

まずは1字1字、そういった漢字練習帳で上手に書ける状態を目指しましょう。
「中心線など入っていない無地の紙で練習するタイミングはいつがいいですか?」という声が聞こえてきました。そんなタイミング、わかりません。マス目の入ったもの、無地の紙のもの、同時進行で練習しても良いですし、日替わりで練習しても良いですし、自分が挫折せず最も続けられる方法を選んでみてください。

上手に書けない場合、
・マス目なら上手に書けるのか
・無地の紙で練習すると下手なのか

など、原因を切り分けてみてください。

マス目で書いても下手ならそれは字の上手な書き方を知らないだけなので、当然、無地の紙で書いても下手になりますし。
マス目で書いたら上手で、無地の紙なら下手な場合は、ただ単に無地の紙で書き慣れていないだけとか、その漢字やひらがなの中心線がよくわかっていないかもしれないですし。

漢字が先?ひらがなが先?練習の順番は?

わかりません。

自分が挫折せず最も続けられる方法を選んでみてください。

ただ、例えば準備運動とかでボールペンや筆でグルグルを書いたりするやつ、よくあるじゃないですか。

あれは私は一切やっていませんでした。

あれの意味がわかりません。

グルグルするなら、ひらがな書いてた方が100倍マシだと思います。
ひらがなは曲線が主体なので、ひらがなの練習しつつグルグルもできますよね。

あとは、線を斜めに書いたり、まっすぐ縦に・横に書く準備運動とかも同じです。
あれの意味がわかりません。

それをするならお手本見ながら書くとか、古典臨書するとかのほうが、運筆の良い練習になると思いますが、いかがでしょうか。

練習メニューを考えすぎて、結局手に付かないという人は、今日はひらがなの練習、今日はカタカナの練習、今日は漢字の練習など、日替わりで練習する書体をローテーションしてみてください。

漢字なら、まずは小学校1年生の漢字から練習するとか。
ちなみに私は1年生→2年生→3年生・・・という順番ではやらないです。
例えば5年生→2年生→6年生→1年生→3年生みたいな、よくわからない順番でやります。
1から始めると、3あたりで「うわ〜まだ4と5と6があるよ」みたいな絶望感を感じやすいからです。
あえて順番通りに進めず、ランダムに進めてみるというのも私がよくやる練習方法です。

あとは、飽きてきたら別の練習に切り替えたりしています。
書くのが飽きたら書道系やペン字関係の本を読んだり、など。
ただただひたすら字典を眺めたり。

まずは、”練習した”という実績を作ってみてください。

ちなみに例えば野球部の子が、よく無意識にどこでもフォームの練習をしたりするじゃないですか、アレと同じ感じで、気づいたら私も「いろはにほへとちりぬるをわかよたれそ・・・・」と暇さえあれば書いていました。
ひらがなの練習を練習だと思っているうちは、まだまだ素人です。

ローラー作戦のように、常用漢字をひとつひとつ練習していったほうがいい?

これは答えるのがとても難しいです。

やるかやらないかでいえば、当然やったほうが良いことかもしれませんが、優先度は低いと思います。

常用漢字ひとつひとつ書いていって、
・それなりに書ける(と自分では思う)
・なんだかしっくりこない

という2つに分類して、「なんだかしっくりこない」漢字を見つける作業をすると良いと思います。

それなりに書けるものに時間をかけるよりかは、なんだかしっくりこないと思う漢字に時間をかけていったほうが、効率的に上達できるかなと思います。

 

「なかなか練習に身が入らない」
「自分は今何を優先して練習すればいいのかわからない」

そんなあなたのために、月1回、公開添削企画を実施しています。

お手本を見ずに、自運で書いたもの限定ではありますが、毎月なにかしら提出してくれれば、あなたが抱える課題をお伝えし、こういう練習をすると良いという的確なアドバイスができます。

例えば、

・漢字練習帳にひらがな全てを書いたので添削をお願いします。
・さんずいの漢字をたくさん書いてみたので、添削をお願いします。

など、紙の大きさやフォーマットは自由なので紙1枚に収まっていればOKです。
練習法についてのご質問や、なんでもかんでも質問OKです。

正直、あなたの字を見ないことには、あなたに響くような的確なアドバイスができません。

ちなみにすみません、公開添削以外のプライベートでのレッスンや添削は、もう募集は終了していますので、お問い合わせいただいても応えられないです。

よろしくお願いいたします。