夏ごろからコツコツと、褚 遂良の楷書千字文を臨書してましたが、やっと全臨することができました。摩滅してる文字は飛ばしちゃったので正確には千文字かけていないのですが、細かいことはどうでもよいのです。
さて、今回の全臨を終えて、楷書がまた少し上達したような気がします。例えば、
①縦画、横画を書く時、全くブレなくなった
②ハネの形と、ハネを形作る動作の理解が深くなった
この2点。
①縦画、横画を書く時、全くブレなくなった
私は2017年2月から書道というものに触れて、ちょうどその当時ぐらいの臨書です↓
みんな大好き、九成宮醴泉銘(きゅうせいきゅうれいせんのめい)です。

九成宮醴泉銘の特徴の一つである、”縦長の雰囲気”は捉えられている感じがしますが、点画の一つ一つが本当に頼りない感じがします。
特に縦画に自信のなさが現れてしまっています。
多分、当時から点画の太い・細いは多少見えていたのかもしれませんが、表現技術がまだ追いついていなかったのかもしれません。
当時は、毎回「縦画か~ヤダな~」という感情になり、早く縦画を終わらせたいがために、まるで新幹線が通るかの如く、「シュバッ!!!」と縦画を引いていたのですが、今のスピードは各駅停車くらいのスピードになっています。
昔の私みたいに、「シュバッ!!!」というか、勢いよく縦画を引いている先生が日本には結構たくさんいて、そうする理由が「活きのいい線になるから」とかおっしゃっているのですが、私はそうは思わず、必ずしも勢いよく縦画を引くことが良い線になるとは限らないんじゃないかなと思っています。
ブログ上ではあまりそのことに言及しませんが、筆が紙に引っかかる音を聞き、そしてその感覚を体で感じることができれば、結果的に良い線になると思います。
いや、実は逆で、良い線を成すためには、筆が紙に引っかかる音を聞き、そしてその感覚を体で感じることが必要なのかもしれません。
どっちなんだろう?もしくはどっちも違うのかな?思いを巡らすのがとても楽しいですね。
とにかく、墨、筆、紙、硯の文房四宝(ぶんぼうしほう)、そして”自分”もあわせた”五宝”が、相互に手と手を取り合い、共存共栄の精神で良い字をこの世の中に生みだしていく、書道ってそういうものだと感じました。
②ハネの形と、ハネを形作る動作の理解が深くなった
ハネ、永字八法でいうところの”趯(てき)”の部分です。
もちろん、ハネの形は既に習得していたつもりでしたが、いろいろと悩んでいました。
生徒さんに教える以上、わかりやすく、再現性が高いハネの形を教えなければなりません。
そういう意味で、「どういうハネがいいんだろう」と悩んでいました。
ハネの形は書道団体によってさまざまな形、動作が存在するようです。
大きく分けて、パターン1とパターン2があります。


私はパターン1の形・動作でハネをしています。パターン2でもハネることはできるのですが、収筆の形との統一感がとれなくなってしまうので、私はパターン2を採用していません。
(収筆の形についてはまた今度触れよう思います)
そして、このパターン1から更に細かく分化します。特に動作の部分ですね。
分化する理由は、縦画を引いている際の、
①穂先を線の内側(真ん中)を通らせるか
もしくは
②穂先を線の外側(左側)を通らせるか
によって、キレイなハネの形を表現するために取るべき動作が変わってくるからです。
代表的な古典の楷書作品(初唐の三大家)のものは、個人的にはパターン1・②に分類されることが多いと思います。
ということで、パターン1・②に分類されるハネを書いてみました。

赤丸で示した部分が、今回のハネです。
縦画を引き、落ちきる直前に左下に少し逃がし、ハネる。
穂先はほぼ左側を通しました。
運筆時は、懸腕法(けんわんほう)で運筆しています。
筆管(ひっかん)は、ちょっぴり右に傾ける意識です。
私はこの形のハネが好きなので、普段のお手本を書く時も、このハネの形・動作を採用しているし、これを基本点画のハネとして教えています。
皆さんは、どんなハネの形・動作が好きですか?
おそらく、こういう基本点画って一つの確実な正解がないので、自分の所属する書道団体の基本点画を習得しておけば問題ないと思います。
私みたいにどこの書道団体にも所属していない人は、基本的には全国大学書写書道教育学会が発表している基本点画を学んでおけば間違いないと思います。小中学校の書写教科書を執筆されている宮澤正明先生が在籍されている団体です。
まとめ
結論、古典ってスゴイってことです。
書のうえで何かしら課題を抱えていたり、何かを悩んでいる場合、古典を臨書すれば大体解決します。
私は特に楷書で色々悩んでいたのですが、今回の全臨で解決できたものが多いです。
ということで、皆さんも古典の臨書をしましょう。
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